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若手強化計画 5

 明日の試合の作戦会議がてらもうすこしボールを触っていたいから、というノブオたちを残して、オレたちは浜を後にした。
 すぐに帰ってもよかったのだが、このまま放っておくには何となく若手ふたりのことが気になって、浜の近くのファストフード店へ立ち寄ることにした。

 「なあ、森園よ」
 「何? リュウジ」
 ハンバーガーとコーラを交互に口に運びつつ、リュウジは森園主将に訊いている。
 「あの、何てんだ? 野球の試合中に投手と捕手で手話みたいの、やるだろ?」
 「ああ、サインのことだね」
 それそれ──というふうにリュウジは口をもぐもぐやりながら頷く。

 「サインがどうかした?」
 「いやな。あれって便利そうだなと思って」
 「便利というか、マウンドへの作戦伝達の手法はそれしかないからね。『次は1本外して』なんて、口に出しては言えないから」
 「ふうむ……」
 なんて、リュウジは天井を仰いで唸っている。

 「サインってのは、投手は絶対服従なんだろ?」
 「まあね。基本的には。もっともうちのエースはときどき俺のリードに刃向かうけれど」
 「ああ、それがさっき森園主将が言ってたことだ」
 「そうだよ、相棒さん」
 オレが口をはさむと、森園主将が肯定する。
 
 「配球を決めるのは、捕手の仕事なのだよ。少なくとも投手よりは冷静だから」
 なるほど、なんてオレたちはそろって感心していた。

 ファストフード店のガラス越しに、夜の海が広がっている。
 残念ながらノブオたちのいるはずの浜は死角になっているのだが、きっと今ごろまだがんばってるんだろうな。

 「あ~、なんか半端に食うと満たされねえな」
 残ったポテトを摘みながら、リュウジが言った。
 「ってリュウジ、ハンバーガー2個食ったじゃん? それで半端なんだ」
 「当たり前!! 育ち盛りだからな。俺、もうちょっと食うわ。何かいるか?」
 そうリュウジはダイゴと森園主将に訊いた。
 「俺は結構だな。もう満腹」
 「押忍。俺も帰ると食事があるので」
 「そうか。ハヤトは?」
 「ああ──ちょっと見に行く」
 そう答えて、オレはリュウジと連れだってレジへと行った。

 「何だ、ハヤトは腹一杯かと思ったぜ」
 「うん。オレはもういらないけど、ノブオたちに差し入れしてやろうかと思って」
 「おう、気がきくな!!! よし、ハヤト。それなら俺がおごってやろう」
 顔をほころばせてリュウジが言った。

 「え~と、テリヤキチキンバーガーとチーズバーガーとコーラの大きいやつをを2個ずつな。あとポテトも2個。それは持ち帰りでよろしくな。で、あとダブルバーガーってのをひとつ。これは食べてくから」
 「かしこまりました。少々お待ちください」
 目のぱっちりしたレジのお姉さんにスマイルで言われ、リュウジが照れたようにスマイル返しをするのがおかしかった。
 「リュウジ……ああいう娘タイプだからなあ」
 「ん? ハヤト、何か言ったか?」
 「いいえ、何も」
 とか答えながら、ついオレはくすくす笑ってしまった。

 オレにも同じテンションのスマイルを向けてくれたお姉さんに会釈をしてから品物を受け取ると、オレは一旦店を出た。
 「じゃあハヤト、夜露死苦ぅ!!」
 「オス。何か伝言ある?」
 「いや、これ以上云々してうるさがられるのもアレだしな。やめとくぜ。そうだな、そう考えると配達はハヤトが適任だな」
 「え? なんで?」
 「疲れてるときには、ちょっととぼけた奴の顔を見るほうが癒されるんじゃねえか?」
 まあ、いいか。褒め言葉ととっておこう……って、この発想がとぼけているんだろうな、オレ。

 さて。ノブオたちもさぞ腹を減らしているだろうな、なんて思いながらオレは浜まで降りる道をたどった。
 こんな時間の浜はとにかく暗い。ひとつだけ、しょんぼり点る外灯を頼りに浜辺を歩く。

 ちょうどあの外灯のあたりにノブオたちがいるはずだ。
 夜の海って威圧感あるよな、なんて暢気に思ったのだが、一瞬ののち、オレは騒々しい気配に気付いた。

 防砂林の切れ目から、ノブオと天宮くんの姿がオレの視界に入る。と同時にオレの目が認めたものは──

 「だから、言ってるじゃねえか。球遊びが楽しそうだから俺たちも混ぜてくれ、ってな」
 まるでからかうような声が言う。
 オレの視野に像を結んだ姿、声の主は──コウヘイだった!!

 外灯の薄暗い灯りに青白く照らされたその表情は、いつもより凄味を増しているかのようだ。
 コウヘイの横にはゴンタが無言で立ちつくしている。
 
 ノブオは、そのコウヘイと正面から対峙している。
 背後に天宮くんをかばうようにしながら、間合いを保って──ただただコウヘイの視線に耐えるかのように、まなざしをぶつけていた。

 「ほら、球こっちに貸してみな。遊んでやるよ」
 「────」
 「かかってこいや!!」

 コウヘイの声が叫ぶと同時に、オレはもと来た道を駆け戻った。
 おそらくオレごときが出ていっても、何の助けにもならないことは火を見るよりも明らかだ。
 リュウジを呼ぶ──それが最善の策だと瞬時に理解して、オレは全力で疾走した。
 手に提げたハンバーガーの袋がとんでもなく邪魔だった。
 途中で飲み物の入ったほうの袋を落としてしまったが、構っている余裕はなかった。
 
 

テーマ : パチスロ - ジャンル : ギャンブル

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