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疾走ロード 3

 駐車場に単車を停めて、オレはリュウジの姿を探した。
 駅前で一番高級そうなそのホテル──サウス・アヴェニュー・ホテルとかいう洒落た名前らしい──は、外観だけでオレを圧倒している。
 一瞬気後れしたものの、オレはとにかくリュウジの入っていった正面玄関に突入。

「すいません、さっき赤いリーゼントの漢が通り過ぎたと思うんですけど」
 フロントの清潔感あふれる女の人に訊いてみた。
「はい、あちらのメインダイニングへ向かわれました」
 どう考えても場違いなオレに対してもこんな受け応え──さすがのプロ根性だぜ。
 どうもっス、と頭を下げておいて、オレは示された方角へ足を向ける。

ブーツのかかとが音を立てない絨毯に、さらなる違和感をかき立てられた。

 メインダイニング=レストランのことのようだ。
 中を覗くと、窓際の奥まった一角にひときわ目立つ赤い髪──リュウジが立ちつくしている。
 遠目から見ても背中の筋肉を強張らせているのがわかった。

 なぜやら気圧されて、オレは近くに行くのをためらっている。

 窓際のテーブル席に着いているのは、おばさんふたりとお姉さんひとり、それからこちらに背を向けている男がひとりの4人だった。男はスーツ姿、女性たちはそれぞれ着飾った身なりをしている。とくにお姉さんは着物を着ていた。

 リュウジを見て、男は立ち上がり、お姉さんはびっくりしている様子だ。
 よくは解らないけれど、その一角に緊張感が漂っているのが感じられる。

 オレは思わずごくりと唾を呑んだ。

 リュウジとお姉さんの間で二言、三言のやりとりがあった。
 と思いきや、リュウジが突然体の向きを変え、オレのいる入り口に猛ダッシュで近づいてくる。

「待って、リュウちゃん!!!」
「おい、コラ、リュウジ!」
 お姉さんと男が同時に叫ぶ。

 けれどもリュウジはろくに前も見ないでオレの横をすり抜けていった。
「あ、おい、リュウ──」
 声を掛けたものの、まったくオレに気付きもしないで、あっという間に正面玄関へ走る。
 途中、ホテルのボーイさんにぶつかったリュウジは、さっきまで大事そうに抱えていた包みを落としたのだが、まったく意に介さない様子で一目散だ。

「あ、すいません。それオレの連れのです」
 尻餅をついたボーイさんに言って包みを受け取り、オレはダイニングを振り返った。

 リュウジを追って出てきた、リュウジを「リュウちゃん」と呼んだお姉さんはおろおろしている。
「あの、これ。多分リュウジはあなたにお届けするつもりだったはずなので」
 オレは咄嗟に包みをお姉さんに渡した。
 淡い紅色の着物姿の、色白でやさしい目をした人だった。

「え? これ? 私?」
「はい、きっと」
 オレはにこりと応えておいた。

 そして──
「おい、ハヤトじゃないか? 一体……」
「はい? ──!!!」
 オレはその時気付いたのだ。
 スーツの男が、オレたちのクラスの担任教師だったことに。
「なんで先生こんなとこに?」
「俺か? 俺は、まあ、見合いだ」
「お見合い──ですか」
「そんなことよりお前らこそ、どうして──」
 オレは担任の問いには答えず、ふたりにお辞儀をしてその場を走り去った。

 そうか、そういうことだったのか。

 ようやく腑に落ちたオレは、今度こそ必死でリュウジの後を追いかけた。

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