目次

過去の記事をまとめて表示できるようにしてみました。 【 】がついている項目をクリックすると、それぞれのタイトルの記事を一括でお読みいただけます。 【 】内の数字が若い順に古い記事となっております。 【 】内の冒頭数字が同じものはそれぞれ対になるおはなしです。

これまでのおはなし

全タイトルを表示

御来訪感謝

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

若手強化計画 7

 「タイムだと? 外野が何言ってやがる」
 リュウジとの対決に水を差した恰好の森園主将を強い視線で睨め付けて、コウヘイは凄んだ。

 「ふふふ。あいにく俺は外野じゃなくてね。捕手だから」
 森園主将は眼鏡を直しながら、怖じける様子もなくコウヘイに言い放つ。
 「とにかくリュウジ。ちょっとこっちへ」
 「お──おう」
 思わず、といった具合でリュウジは森園主将に応じたのだ。

 森園主将はリュウジとコウヘイの熾烈な争いを、いとも簡単に中断させた。というか、スポーツのルールでよくある『タイム』を要求するという荒技に出たのだ。
 このような展開に慣れていないオレたち一同は呆気にとられ、気付いてみれば森園主将の手の内に巻き込まれるような形。

 リュウジはコウヘイの前から一歩下がったところで、森園主将に何やら耳打ちされている。ときどき頷きながら聞いているのを見ると、何某かの作戦を授けられているのだろう。

 「天宮、森園サンは一体?」
 ノブオが訊いている。
 「たぶん相手を攻略するツボを見切ったんだろう。それか、単に流れを変えたかったか。どちらにしても、主将のタイムはいつも絶妙のタイミングだから」
 「それでタイムか。こんな道理がコウヘイに通用するなんて思ってもみなかったな」
 「ああ、まったくだ。とういか、敵も虚をつかれたな」
 「そうなんですか? ハヤトさん、ダイゴさん」
 天宮くんは意外そうな顔をする。

 「それはそうだ。喧嘩でタイムなど聞いたことがない。ほら、奴らが驚いている」
 ダイゴの示した先にいるコウヘイは、なんとも言えない表情で、だらりと下ろした腕に軽く拳を握っていた。
 「なるほど、ある意味奇襲作戦だな、これは」
 仮に森園主将にその気はないにしても、結果的にはそうに違いないとオレは思った。

 「さあ、試合再開だ、両者──プレイ!!」
 しばらくの後、森園主将は夜空に拳を突き上げながらこう宣言した。

 森園主将の奇妙な仕切直しを受け、ふたたびリュウジとコウヘイは一定の距離を保って睨み合う。
 外灯が照らす夜の中、さっきよりもリュウジの背中は集中した雰囲気を漂わせているような気がした。
 対するコウヘイの表情は暗さのせいで良くは見えないが、動作がすこしいつもと違う気がする。砂浜で足場が悪いせいだろうか。

 森園主将は号令を掛けたあと、オレたちの近くではなくむしろゴンタに近い側に下がった。
 これが何を意味するかは、しばらく後に明らかになる。

 「コウヘイ!! 行くぜ!!!」
 「おう、かかって来いやあ!!!」
 両者の怒号が夜の浜にこだまする。
 さっと身構えて、リュウジはコウヘイに向かって一歩を踏み出す。
 応戦の構えのコウヘイは腰を低く落とし、拳を握った。

 拳の火花が散る!!!──と誰もが予想したその刹那。リュウジは思わぬ動きを見せた。
 リュウジはコウヘイに向かって踏み出した一歩を引き、さらに一歩を横へとずらしたのだ。
 「おお──ッ!!」
 リュウジに当たるはずの拳に宙を斬らせたコウヘイは、空振りの反動で体のバランスを崩す。
 そこへ来て、リュウジが構えを更に低くする。
 と見るや否や、リュウジはコウヘイの腿のあたりに狙いを定め、両手で抱きかかえるようにして体を捉え──渾身の一撃でもってコウヘイを投げ飛ばしたのだ。
 
 コウヘイの体を受け止めて、砂が舞う。
 「ぐ……ッ」
 思わぬ攻撃にコウヘイは弊れた。立ち上がって応戦することを予想したリュウジは構えを解いてはいなかったが、ゴンタがコウヘイのもとに駆け寄ったのを合図に、今宵の勝負は決着を迎えることとなった。

 「試合終了だ。リュウジの勝利」
 相変わらず涼しい声で森園主将が言ったのを、コウヘイには聞こえただろうか。
 
 「兄貴!!」
 「リュウジ──!」
 「押忍、おつかれさんです」
 「オウ」
 オレたちのところへ戻ってきたリュウジは、額の汗を拭いながら頷く。

 「兄貴、すみませんでした。オレ、こんなことになっちゃって……」
 ノブオがちいさくなってリュウジに詫びた。
 「いや。ノブオのせいじゃねえだろ?」
 気にするな、といったふうにリュウジはノブオの肩をたたいてやった。

 「天宮、怪我はねえか?」
 「ええ、おかげさまで。ノブオが守ってくれたので」
 「おう、そうか!!! ノブオ、よくやった」
 「兄貴……」
 ノブオは感動した声音でリュウジに答える。

 「それはそうと、森園よ」
 「何だ? リュウジ」
 「サインとやらは本当に便利だな」
 「ふふふ、そう言ってもらえれば光栄だね」
 腕組みをして、森園主将は満足そうに眼鏡の奥の目を細めた。

 「何? そのサインって」
 オレが訊くと、答えたのは天宮くんだった。
 「ハヤトさん。試合再開のときに主将が立ち位置を変えたの、わかりました?」
 「ん? ああ、それはわかったけど」
 「主将はリュウジさんの正面に行ったんです。サインを出すために」
 「ああ、そいういえば何か身振り手振りしていたな、森園主将」
 ダイゴが言う。オレはよく見てはいなかったのだが、言われてみれば。

 「そうだ。あらかじめタイムのときに相談しておいたんだが、俺は森園の見切った間合いでもって、コウヘイに普段はしないような、肩すかしと投げ技を見舞ったんだ」
 リュウジが服についた砂を払いながら言った。
 「まあ、このような時だ。敵に読まれにくいサインを作るには至らなかったとはいえ、サインを送っていること自体が読まれていなかったのが幸いだった」
 「へえ──凄いな。作戦勝ちだ」
 オレは思わずため息をつく。
 さすが以前、リュウジが参謀にスカウトしたことだけはあるな、この男は。
 
 「ともかく、ナイスリードでした、主将。自分、感激しました。いつもこんなリードで試合に臨めているのは光栄の極みです」
 言って、天宮くんは森園主将に深く頭を垂れた。森園主将は黙ったまま頷いていた。
 
 オレたちがそんな会話をしているうちに、コウヘイとダイゴはいつの間にか浜からいなくなっていた。
 
 「さてと、とんだ展開になったな。俺らもそろそろ上がるか。明日があるし。なあ、ノブオ?」
 「は、はいっ!! 兄貴!!」
 ノブオは従順に返事をした。

 「本当にみなさん、ご迷惑お掛けしました。きっとオレの日頃の行いが悪いんです」
 改めて、ノブオは一同に向かって頭を下げた。
 「わはははは、ノブオ、ちっとはわかったようだな!!!」
 大きく笑い飛ばしながら、なんだかリュウジは嬉しそうだった。
 うん、ノブオはちょっと変わったかもしれない。オレにもそんなふうに思えた。

 そんないい雰囲気の中、オレは手に提げたままのハンバーガーの入った袋に改めて思い至った。
 「え~と、ノブオ、天宮くん。遅くなったけどこれ。差し入れだから食べて」
 「え、ほんとですか? ありがとうございます!!」
 「すみません、ハヤトさん」
 「ははは、お礼はリュウジに言ってくれ。リュウジのおごりだから」
 「リュウジさん、ありがとうございます」
 「兄貴、いただきま~す!!」
 「おう!!」

 言いながら、若手ふたりが袋の封を開けてみると──ハンバーガーはすっかり冷めて、おまけに思いっきり潰れていた。
 けれども文句ひとつ言わずに平らげてくれるノブオと天宮くんを見て、オレは心底後輩を可愛いと思った。
 きっと、他の面々も同じ思いだったに違いない。見守る誰の目も優しかったから。

 海からの風に髪をなびかせている若手たちは、ひとまわり逞しくなったところを明日は見せてくれるだろうな。通い慣れたこの浜で。


   * 若手強化計画  完 *

テーマ : パチスロ - ジャンル : ギャンブル

<< Road to スイカ 1 | ホーム | 若手強化計画 6 >>


コメント

つ、ついに・・・

リュウジとコウヘイのタイマンがッ!
・・・ボッコボコの殴り合いになるのかと思いきや
主将がサラリと雰囲気を変えてくれましたね。
いやー、主将イイッ!ぜひ愚連隊のメンバーに!
まずは旗持ちからでも(笑)

それにしてもハヤトはホント、ケンカはしないんですねぇ。
一度挑戦してもらいたいなぁ。実機でも。
ま、その分、単車勝負にかけてるんですけどね。
うちのハヤトはそれすらダメですが・・

主将

>>ピノコさま
こんばんわ~☆
主将、実は長年使いたくて温めてきたキャラクターなんですよ。
こんな形で動き出した彼を気に入ってくださって恐縮です!!!
つーか、ああいうキャラがいてもいいですよね。愚連隊には。

ハヤト、喧嘩したらタカシあたりにも「余裕だぜ!!」で負けちゃうんでしょうからね(^^:)
鍛えられてこい!! って気もしますけど。だはは。

こんばんわ

ノブオが強化されたようですね!
私は実機ではダイゴよりも戦績は良いのですが(笑
やっぱりいざとなるとリュウジが頼りになりますね。頼れる兄貴、良いな~

ところで誰が最強って、もしかして森園君ですかね(笑
軍師として彼は魅力的ですね。
ハヤトもプロフでは「coolで云々」と書かれてるので素質はアリかも?
森園君に鍛えて貰うってことで如何でしょう(笑

鍛えれば!!!

>>単savaさま
ノブオ、鍛えれば出来る子だと思うんですよね。個人的に。
実機のダイゴは、根が優しいのがアレなのでしょうか(^^:)

ハヤトは野球部に入部させときましょうか。だはは。
まずは球拾いからですな。
夕方は森園主将に鍛えられ、夜は夜でリュウジ総隊長に喝入れてもらって。
育て甲斐がありそうな予感 :*:・( ̄∀ ̄)・:*:

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

 BLOG TOP 


  1. 無料アクセス解析
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。