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純情・赤ジャージ 4


 「それで? 付き合ってるのかよ、その可愛らしい女の人と」
 リュウジは赤ジャージの言葉のとぎれ目を見つけると、鋭く切り込んでいく。
 それを聞いた赤ジャージは、どきっとした表情でリュウジを見てからちいさく言った。
 「いや──残念ながらまだ、そういう段階ではない」
 「じゃあ、片想い?」
 「どうだろうな」
 オレの投げかけに、赤ジャージは曖昧に笑った。
 
 「雰囲気自体は悪くないのだ。実を言うと」
 「お~、憎いぜ、赤ジャージ」
 またリュウジにちらりと視線をやって、赤ジャージは息を付いた。
 「雰囲気がいいんだったら、タイミングいいうちにどうにかしたほうがいいんじゃないの? 相手の女性も待ってるかも」
 「オウ、ハヤト!! 言うことがさすがだぜ。そうだってよ、赤ジャージ。勉強になるよな?」
 
 「ああ──それはそうなんだが、目の前に障害があって、な」
 赤ジャージの瞳がちょっと曇った。
 「その女性には兄がいてな、それが俺のことをよく思っていないのだ」
 「おお、そうなのか。まるでドラマみてえだな」
 なんてリュウジが感心している。

 「彼女と出会ったのはここ最近なのだが、その兄と俺とは高校生のころからの宿命のライバル同士でな。皮肉なことに」
 「へえ、そうなんだ」
 「ああ、ハヤト。俺は鬼工のOBで、彼女の兄は暗黒水産のOBだ。伝統的に好敵手なのだな、両校は」
 「ほう。昔からそうだったのか。ウチと暗黒の関係は」
 「そうだな」
 答えながら、赤ジャージは額に浮かんだ汗を手の甲で拭った。
 高校時代からの宿命のライバル、といったら、さしあたりリュウジとコウヘイみたいなもんだろうか。

 「彼女と知り合ってしばらくして、初めてそのことに気付いたのだ、俺は。彼女と一緒に町を歩いているところをそいつに見咎められてな。その時に、ようやく」
 「ふうん。まさに宿命って感じだね」
 「ほんとだな、ハヤト」
 3人で視線を合わせて、頷いた。

 「それ以来、彼女は会ってくれんのだ。電話で話をするのが関の山でな」
 「苦しい恋だなあ、赤ジャージ」
 感情移入するほうのリュウジは、赤ジャージの苦しみを自分のことのように感じているみたいだ。
 「そう──確かに苦しいな。だからこそ、リュウジにおかしいと言われる」
 自嘲気味に、赤ジャージが笑った。

 「そろそろ男として決着をつけるべきだと考えているのだ、俺は。この中途半端な状態では、彼女に申し訳が立たんからな。ここ数日はその方法を悩んでいた」
 「そうか。それであんなに上の空だったんだな」
 「うん、なるほど納得」
 オレはリュウジと顔を見合わせた。

 「よし、わかったぜ。赤ジャージ」
 リュウジは腕組みをする。顔には不敵な笑みをたたえて。
 「赤ジャージと彼女の兄貴は昔っからのライバルなんだろ? 喧嘩とかもさんざしたんじゃねえの?」
 「ああ、まあ、若いころはな。それなりに、といったところか」
 赤ジャージは、幾分懐かしむように笑った。
 「そういう縁だったんなら、ここはひとつ闘ってみたらどうだ?」
 
 リュウジの言い分はこうだった。
 「そんなに欲しいなら、男なら闘って勝ち取ればいいじゃねえか。彼女を賭けて真剣に闘えよ、赤ジャージ。本気なんだろ?」
 「闘う──か」
 リュウジの言葉を聞いて、いくぶん赤ジャージは晴れた表情を見せた。
 「そうだね、いいかもしれない。真っ向から勝負したら何か変わるかも。悩んでうだうだしてるより、よっぽど彼女にも好印象なんじゃない?」
 「いいこと言うぜ、ハヤト!! な? 赤ジャージ」
 「ああ──そうかもな」
 どうやら流れは、そちらに傾いてきていた。
 「よし、決まりだな」
 リュウジが言うと、赤ジャージは力強く頷いた。

 「で、彼女の兄貴って、何をやってる男なんだ?」
 「奴はな、暗黒水産で体育教師をやっている。俺と一緒だな。母校で教鞭をとっているのだ」
 「へえ、そうなんだ。ほんとに宿命のライバルなんだ」
 俺は思わず感心していた。

 「そうかそうか。おお、俺もなんかヤル気になってきたぜ!!! 熱いなあ、赤ジャージよ」
 火照った顔でそう言って、リュウジは着ていた学ランを脱いだ。
 「ん? リュウジ、お前なんでまだ体操服を……?」
 「え──あ、いけね」
 リュウジは思わずといったふうに舌を出した。

 「そういえばさっき、授業の終わり際にこの赤い髪が見えなかったように思えたのは、気のせいではなかったのか?」
 「わ、いてて!! やめろってば」
 赤ジャージは右手を伸ばして、リュウジの耳を引っ張った。
 「あ~あ、ばれちゃってるよ、リュウジ」
 「というかハヤト? お前こそ端から俺の授業にいなかったように思うが?」
 「え? ま、まさか。ははははは……いてっ!!!」
 今度は空いた左手でオレの耳を攻撃した。ちぎれるくらい痛かったよ……。

 とにかく、赤ジャージの様子はこれでどうやらすこしは落ち着いたようだ。
 話すだけ話してもらってよかったのかも。
 あとは決着をつけるだけ──そんな自覚が赤ジャージを普段どおりに戻したみたい。
 
 願わくば、オレの今日の早退と、リュウジの脱獄を不問にしてくれるといいんだけど。

 

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