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純情・赤ジャージ 5


 リュウジとオレはふたりして、暗黒水産高校に来ている。
 オレたちの担任の赤ジャージの恋路に水を差す、愛しい女性の兄上の勤務先がここ暗黒水産だったのだ。
 
 「それでは一筆書くから、先様に届けてくれ」
 そう言って、赤ジャージは白い紙に筆ペンを走らせた。案外達筆だった赤ジャージの手による表書きは、『果たし状』。
 力強い筆致の字間に、赤ジャージの気合いが込められているのが伝わってくる。
 受けとったリュウジの面持ちは、幾分神妙なものだった。

 そうしたわけでオレたちは単車に乗って暗黒水産の校門まで辿り着いたのだが、さすがに伝統的な宿命のライバル高同士といったところで、鬼工の学ラン姿のオレたちを見る暗黒の生徒達の視線はやたらと鋭い。
 妙に目立ってしまっているので、きっと誰かが呼びに行ったんだろう──暗黒水産を締めている男──コウヘイを。

 「ほう? 貴様等、正面切って現れるとはいい度胸じゃねえか」
 すでに一戦交える気構えなのか、暗黒一家の面々を引き連れたコウヘイは気合いに満ちた口調で言う。それに対してリュウジはまったくもって軽い口調でこう訊いた。
 「オウ、コウヘイ!! ちょうどいいぜ。なあ、ちょっと案内してくれねえか? 俺、人を訪ねてきたんだが」
 「何……?」
 意外な言葉だったらしく、コウヘイはぽかんと口を開けている。

 「リュウジよ、貴様が俺に頼み事をするとは……」
 「だって、仕方ねえだろ? 俺、その人の顔も知らねえんだから。ええと、その人は何て名前だったっけ? ハヤト」
 「佐藤先生だ、リュウジ」
 「そうそう、佐藤先生だ。どこにでもある名前だから逆に忘れたぜ。な、コウヘイ。体育の佐藤先生んとこへ連れてってくれや」

 オレとリュウジの口にした名前を聞いて、コウヘイたちは奇妙な反応を見せる。なぜか一瞬、最敬礼をするときみたいに背筋を伸ばしたような感じだった。
 「佐藤先生に、貴様等が一体何の用事だ──?」
 コウヘイが訝るのに、脇を固めたハンゾウらも倣うような顔をする。
 「ああ、ちょっとな。佐藤先生の知人から、渡すようにと預かってきたものがある」
 「そうか……。佐藤先生のお知り合いの遣いなら無下にはできねえな。仕方ねえ、付いてこい、リュウジ。おい、ハンゾウ。佐藤先生に先触れしておけ」
 「了解です、総帥」
 ハンゾウはコウヘイに頷いて、即座に校舎へ向かって走り去った。

 そして、オレとリュウジはコウヘイらに先導されながら、暗黒水産高校の中へと入ってゆく。
 「なあ、ハヤト。なんかおかしくねえか? 先触れって一体何だろうな」
 コウヘイらの奇妙な雰囲気を察して、リュウジはオレにささやいた。
 「そうだね。あのコウヘイが、教師をちゃんと苗字に『先生』をつけて呼ぶとは思わなかった」
 「だろ? オレなんか担任の名前、忘れてるぐらいだぜ。わはは」
 「オイ、ゴラァ!! 私語は慎め」
 たしかにコウヘイの雰囲気は、見たことのない方向に張りつめていた。

 オレたちが案内された先は、体育館の隣にある道場だった。
 引き戸をがらりと開けたコウヘイは、その場に正座をして頭を下げる。もちろんゴンタとタカシも同様だ。
 畳と汗の匂いが混じった道場の中央には、柔道着姿の角刈りの男性が腕組みをして立っている。いかにも強靱な魂を持っていそうな雰囲気を醸す、肩幅の広い人物だった。身長は赤ジャージのほうが勝っているようだが、がっちりとした体格だ。
 先触れに走ったハンゾウは、道場の後方でこれまた正座している。

 「佐藤先生、この者らは、先生のお知り合いよりの使者だそうであります」
 「うむ、コウヘイ。ハンゾウから聞いている」
 太いがよく響く声だった。

 「まあ、入るがいい」
 「お、押忍」
 さすがのリュウジも気圧されたように見えたが──とにかくオレたちは、靴を脱いで道場へと足を踏み入れた。
 座るようにと手振りで示した佐藤先生は、自分も畳に座り込んだ。
 
 「して、私への用事とは」
 「これを貴殿にお渡しするようにと、我が鬼浜工業高校の体育教師より預かって参った所存」
 リュウジの口調も、自然といつもと全く変わっていた。
 そしてリュウジは懐にしまっていた赤ジャージのしたためた書状を出して、佐藤先生へと手渡した。

 「ふむ……奴から、か」
 ちらりと中を改めて、佐藤先生は呟く。続けて丹念に読み進め、納得したように頷きながら書状をもとの形に折り畳むと、柔道着の懐に仕舞いこんでこう言った。
 「使者ご苦労。戻ったら奴に伝えてもらおう。提案のほどはよく解った、こちらで段取りをしたあと連絡するので待たれたし、と」
 「相わかりました、必ずそうお伝えするでしょう」
 リュウジはそう答えて、深々とお辞儀をしてから道場をあとにした。
 それに倣ってオレもお辞儀をして、リュウジの後を追った。

 オレはずいぶん雰囲気に呑まれてしまっていた。そもそも、リュウジがあんな言葉遣いができるなんて思ってもいなかったし。それを言うなら、コウヘイが誰かを敬うような物言いをするなんてのも、思いっきり予想外だったし。

 用事を済ませた帰り際、オレの単車のリアに乗り込むとリュウジはようやくいつものキャラクターに戻ったんだ。
 「ふう、なんか緊張したぜ。なあ、ハヤト?」
 「ははは、ほんとだね。変な汗出たよ、オレ」
 「まったく赤ジャージの奴め。俺にとんでもないこと頼んだよなあ。今度何かおごってもらおうぜ」
 「ああ、それいい考えだ。賛成!」

 ようやく得体の知れない緊張を解いたオレたちは、ふたたび単車で来た道を戻った。
 佐藤先生からの伝言をもって、赤ジャージのもとへと。

 

テーマ : パチスロ - ジャンル : ギャンブル

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コメント

ハヤトさまへ御礼w

えぇ~先日の非礼を詫びに参りました。
本日リュウジさまに気合をいれていただいたおかげで勝てました♪
ハヤトさまにもお手数をおかけして・・・orz
この場を借りて <(_ _*)>アリガトございましたぁ♪

Tohko姉さんへ

よかったじゃないですか!
今日のオレたち、一緒にがんばりましたよね!!!
やっぱリュウジが気合い入ってると、オレたちも自然とやれるんですよね。
でもって、Tohko姉さんを喜ばせてあげられる、と。
リュウジに伝えておきますね。
きっと照れますけど。あはは。

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