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純情・赤ジャージ 6


 暗黒水産を出て、佐藤先生からの伝言を携えて赤ジャージの家に寄る。
 『連絡するので待たれたし』を聞くと、赤ジャージはほっとしたような表情を見せた。
 やることをやって、吹っ切れた──という顔だった。

 伝令の使命を果たしたオレたちが町へと戻ってきたのは、もういい加減夜が近い時分だった。
 だいぶ日の入りが早くなったな、なんて思いながら国道を走って、オレはリアに乗せたリュウジを家まで送ってやる。
 リュウジの家のラーメン店の裏手に単車を停めると、リアから降りたリュウジが言った。
 「ハヤト、腹減らねえか?」
 「そうだね。ちょっと空いてるな」
 「そしたら店でラーメン食ってけや。俺が作ってやるから。食いながら、ちょっと話そうぜ」
 「うん、じゃあそうするよ。いつ食っても旨いからね、リュウジのラーメンは」
 「オウ!! 当然だぜ。気合いが違うからな、ウチのは」
 自慢そうにリュウジが言いながら、オレの前に立って店に入る。

 すると──
 奥のテーブルにいた女の人が立ち上がって、リュウジのもとに駆け寄ってきた。
 色白でやさしい目をした、小柄な大人の女性だった。
 「リュウちゃん!!!」
 「あれ──マキ姉じゃねえか!!! しばらくぶりだな」
 リュウジは言いながら、照れたような顔で彼女を見る。
 うん──このひとって? オレ、どこかで……?

 「リュウちゃん、巻き込んじゃってごめんね。それから、ほんとにありがとう。わたし、もう、いてもたってもいられなくて、リュウちゃんにお礼が言いたくて来たのよ」
 彼女のもといたテーブルにオレたちも座ると、彼女は嬉しそうな、申し訳なさそうな、けれどすこし心配そうな複雑な表情でリュウジにそう言った。
 「俺、マキ姉に何かしたか? 心当たりはまったくないぜ。会うの久しぶりだしな」
 「心当たり、ないのね。そうか、そうよね」
 そんなふうにリュウジに答えて、彼女ははにかんだ顔をする。
 
 そうだ、思い出した。オレが彼女の顔と名前とになんとなく覚えのあった理由を。
 そしたら結びついたんだ。彼女──マキ姉さんがリュウジに感謝の言葉を告げた意味が。

 「マキ姉さん、以前はどうも」
 「あら──ああ、あなた、あの時リュウちゃんと一緒だった?」
 「ええ。あの時はご挨拶もできなくて」
 「ん? ハヤト、マキ姉と会ったこと……あ!!! そうか。あの時か」
 
 ぽん、と手をたたいて、リュウジはようやく思い出したらしい。
 あの時というのは、夏休みに入る前、彼女のお見合いの場にリュウジが贈り物を携えて行ったときのことだ。
 マキ姉さんを慕っていたらしいリュウジは、そのお見合い相手が知った顔だったことに手痛いショックを受けていた。
 そんな事実は、もしかしたら夏休みの間にリュウジの心の中に封印されてしまっていたのかもしれない。
 そう──マキ姉さんのお見合い相手というのは、赤ジャージだったのだ。

 「俺、都合の悪いことは忘れるほうだからな。本気で忘れてたぜ。そうか、じゃあハヤトと会うのは2度目か、マキ姉」
 「ええ、そうね」
 「ハヤトは俺の頼れる相棒なんだぜ。な?」
 「ははは、どうも」
 嗚呼、リュウジはまだ気付いていないんだ。きっと気付いたら、あの時以上のショックを受けるに決まってる。なんだか心配で、俺は曖昧に笑ってみた。

 「で? それはそうと、マキ姉。何が『ありがとう』なんだ?」
 「だから、リュウちゃん。先生に勇気をくれたでしょ? さっき電話したら、先生がいきさつを話してくれたの。リュウちゃんが応援してくれてるって」
 「先生? 誰の?」
 リュウジは鈍いのか、それともわからないふりをしているのか──前者だな。きっと。

 きっとこういうことって、女性には言いにくいのかもしれない。だからオレは、敢えて役目を買って出た。たまには憎まれ役でもいいか、なんて。
 「リュウジ、先生って赤ジャージのことだ」
 「ん?──え? 赤ジャージ……ええっ?」
 「マキ姉さんの兄さんは、佐藤先生なんだよ、きっと」
 「何──何だと? ハヤト!!! マキ姉……?」
 こくり、とうなずくマキ姉さんの色白の顔は、頬に赤みがさしていた。

 「だって、マキ姉、佐藤先生って……赤ジャージって!!!」
 「マキ姉さん、苗字は佐藤さん、ですよね?」
 「ええ。そうよ、ハヤトくん。リュウちゃんはちっとも覚えてくれなかったけど。よくある名前だからかえってややこしい、って」
 「…………だってよぅ、マキ姉はマキ姉だしよぅ」
 リュウジは拗ねたような顔をする。マキ姉さんがリュウジを見る顔は、まるで幼い弟を見るときのそれ、といった風だった。

 きっと、これはリュウジへの試練だ。どんな衝撃にでも耐えうる強靱な魂を磨く──潔い漢を磨くための。
 だからオレは、進んでそれに荷担することに決めたんだ。
 「マキ姉さん、聞いてもいいですか?」
 「ええ、ハヤトくん」
 「オレたちの担任と実のお兄さんの勝負、どちらに勝ってほしいと思いますか?」
 
 オレとマキ姉さんのやりとりを、リュウジは黙って、うつむいて聞いている。
 「それは、兄さんに負けてほしいわけじゃないけれど、やっぱり……」
 「では、オレたちの担任を応援しますか?」
 「そうね。先生──あなた方の担任の先生に勝ってほしいと思うわ」
 きっぱりとそう言ったマキ姉さんの目には、やさしい雰囲気と強い気持ちが同居していたんだ。
 リュウジ、ちゃんとそれを見たか?

 「じゃあリュウジに聞くけど」
 「何だ、ハヤト?」
 リュウジはまだうつむいたままだった。
 「リュウジも赤ジャージを応援するだろ? さっきあんなに親身だったのを、いまさら覆したりしないよな?」
 「…………」

 しばらくの沈黙のあと、リュウジは心を決めたように顔を上げてこう言った。
 「オウ!! 俺らの担任が負けるとこなんて見たくねえからな!!! しかも、鬼工と暗黒のプライドがかかってるんだ。佐藤先生の身内のマキ姉にゃ悪いが、暗黒に勝ち目はねえぜ」
 「リュウちゃん……ありがと」
 リュウジの言葉を聞いて、マキ姉さんは涙を浮かべていた。
 やっぱりいい漢だな、リュウジは。年齢が釣り合ってたらよかったのに、マキ姉さんと。

 マキ姉さんがもう一度お礼を言って立ち去ると、リュウジは約束通りラーメンを作ってくれた。
 スープが心持ちいつもよりしょっぱかった気がするのは、リュウジの涙だったのかな……なんてね。
 

テーマ : パチスロ - ジャンル : ギャンブル

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コメント

うーん、やっぱりね

私は赤ジャージの恋する人が
以前お見合いをした女性だと薄々気づいて
いましたヨ。うふふ
ちゃんと覚えてますよぉ。
熱狂的なファンですからね、この小説の。
いい読者でしょ、私(笑)なんちて。

しかし、佐藤先生って何者なんでしょ?
怖そうだなぁ。コウヘイも一目置いてるなんて・・

感激でございます!!!

>>ピノコさま
うお~~~、感激☆
覚えててくださったですか。恐縮です!!!
しかも、そんなファンだなんて……感涙 。
どうもありがとうございます!!!

でも、とっくにわかっちゃってる方には、引っ張り
すぎましたよね。だはは。
お恥ずかしいでございます。

>しかし、佐藤先生って何者なんでしょ?
それは実はわたしも気になって……。って、オイ(汗)

うわぁw(゚o゚)w

あわわ…あわわ… 気づかなかった!ごめんなさぁ~い(;_;)

電車の中で読んでてうお~って顔しちゃいました(笑)
まったくかっこいい!

電車うぉ~www

>>Tohkoさま
だはは、気付きませんでした?
じゃあ半々と思っておいたらOKですかねえ(=^▽^=)
気付いてくださるのも、びっくりしていただけるのも
同じくらい幸せですよん♪

ところで、携帯でまで読んでいただけるってうれしいです!!!
文字数多いからがんばってくださいねwww

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