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純情・赤ジャージ 8

 
 マキ姉さんへの純情を賭けた、赤ジャージと暗黒水産・佐藤先生との真剣勝負の日。
 オレたち4人は赤ジャージとともに、敵陣・暗黒水産へと乗り込んだ。

 「今日はマキ姉さんは来るの? 先生」
 「いや、ハヤト。彼女は今日はやめておくと言っていた」
 「そうか。その方がいいかもしれねえな」
 「え、どういう意味っスか? 兄貴」
 「だって、気が散るだろ? なあ、ダイゴ」
 「押忍。先生がいかに精神集中はお手の物といえども、さすがにな」
 オレたち外野の言うことに、赤ジャージは気もそぞろといった笑いを返した。
 やっぱり緊張してるんだろうな。

 オレとリュウジが来るのは2度目の暗黒水産の道場は、前に来たときもそうだったけれど、おそろしく張りつめた空気を周囲に放っている。
 なんというか、そこの主の強い気が渦巻いているとでもいうような。
 道場の前に立って、赤ジャージを含むオレたち5人は、我知らずで背筋を伸ばす。

 そして、赤ジャージは引き戸に手をかけて、びいんと張った声を出す。
 「たのもう!!!」
 迷いや怖れは一切感じさせない、漢らしい声音だった。

 「久しいな」
 道場を取り囲む気を発する源──柔道着姿の佐藤先生は、赤ジャージに短く言った。
 佐藤先生の後ろには、コウヘイ以下暗黒一家の面々が正座してオレたちを見つめている。ともに居並ぶ柔道着姿の数人は、柔道部員だろうか。
 
 「今日は手合わせ願えて光栄至極だ」
 「何の。試合の申し入れを無意味に断るのはよしとしない故」
 佐藤先生は赤ジャージに笑みを見せる。笑っていても、ちっとも発する気が緩まないのが真実凄いと思った。
 「もっとも、無意味に闘うような真似はせぬがな。本日の闘い、意義あるものにしたいものだな」
 「ああ。こちらも是非そう願いたい」
 静かな中に散る両者の間の火花は、リュウジとコウヘイがたまに見せるものよりも数段鬼気迫るものがあった。これが貫禄なんだろうか。

 挨拶のあと、ハンゾウに案内されて赤ジャージは更衣室に向かった。
 着替えを済ませ、頬に気合いを入れながら道場に戻ってきた赤ジャージの目には、もはやオレたちなぞ映ってはいない。
 ただ──目の前の倒さねばならぬ敵、佐藤先生のみを見据えていた。

 そして、真剣勝負は始まった。
 昔の宿敵の妹に恋した男と、昔の宿敵に妹を渡したくない男との、純情と自尊心を賭けた勝負が──

 審判をする柔道部員の声を聞き、ふたりの漢は畳敷きの中央で間合いを計りながら対峙する。
 襟をとろうと佐藤先生が近づき、とらせまいと赤ジャージが立ち位置をずらす。
 反対に袖をとろうと赤ジャージが手を出し、そこを佐藤先生に逆に捉えられて左組みの体勢となる。
 一度組み合うと、さすがに両者に隙はなかった。
 赤ジャージは長身を有利に使って足技をかけようとするも、佐藤先生がやすやすと許すわけもない。
 体勢がくずれたのを逆手にとられて、今度は佐藤先生が組んだまま身を沈め、背負い投げをかけてくる。

 「あ──赤ジャージ!!!」
 「先生……」
 「有効!!」
 きわどいところで受け身をとって、赤ジャージは危うく一本負けを免れた。

 赤ジャージの気迫は凄まじい。対する佐藤先生の表情は冷静そのもの。
 寝技に持ち込んだら、昨日ダイゴを締めたみたいにポイントをとれるのかもしれなかったが、相手はさすがに手練れの者。まったくそういう展開になりそうもない。

 焦れたように赤ジャージは相手に踏み込んで、強引に体を低くして投げる体勢に入ろうとする。
 ──オレごときにもわかってしまう。そんな攻め方じゃ無理なんじゃないか?
 リュウジもダイゴも、そんなふうに声をかけたいような顔をしていたが、場の雰囲気がそれを許さなかった。いやに静まりかえっていたんだ。

 一瞬ののち、勝負の行方は、急な展開へと向かった。
 巧く攻めの体勢に入り損ねた赤ジャージは佐藤先生に逆手をとられることとなる。
 そのまま佐藤先生は素早く赤ジャージを前に崩し、自身の体を畳に落とす──そして、静かなる気合いもろとも頭越しに赤ジャージを投げた!!!

 「一本!! 勝負あり」
 
 投げられた赤ジャージは、天井を見つめながら審判の声を聞いていた──

 あとでダイゴに聞いたところによると、佐藤先生が使ったのは巴投げという技らしい。捨て身技というのに分類されているそうだ。
 そんな大技を使った佐藤先生だったが、試合が果てたのちも息を乱すことすらなかった。

 そして──佐藤先生は倒れたままの赤ジャージに右手を差し出した。
 「思ったよりも粘ったな」
 「ああ──だが、さすがに及ぶはずもなかったというわけだ」
 身を起こして、赤ジャージは佐藤先生の手を握る。試合終了の握手だろうか。
 「おのれが勝ち目のない闘いに出てくるとは思わなかった」
 そう佐藤先生は頬の筋肉をすこしゆるめた。
 オレたちが見た、初めての笑顔らしきものだった。
 
 「こちらから申し込んだ試合だ。断れるわけなかろう?」
 赤ジャージは幾分うなだれて言った。
 「勝ち目がなくとも全力で闘うなど、若い時分以来だ」
 「ああ、そうかも知れんな」
 「とにかく俺の完敗だ、佐藤」
 赤ジャージは振り切ったようにそう言った。
 「残念ながら妹君との件は認めてもらえんが、生憎あきらめの悪いところは昔のままなのだ、俺は」
 「ほう、相変わらずだな」
 どことなく郷愁にひたっているような目を、ふたりともしていた。

 「ああ。何年経っても本質は変わらんさ、佐藤よ。さしずめ佐藤は今でも──」
 「その先は、言ってくれるな。生徒たちが聞いている」
 腕を組んで、よく響く声で佐藤先生は言った。
 いったい昔はどうだったんだろう。きっと黙って見守っているコウヘイたちも聞きたいんだろうな。

 「とにかく、出直してくることにする。俺は何度でも。いつか勝てるときまで決してあきらめんのが俺のあり方だ」
 「そうか。それは殊勝な心がけだ。いつでも受けて立とう」
 再試合の要求をほのめかす赤ジャージ、対するのはそれを拒まない佐藤先生。
 因縁めいたふたりの大人の漢は、これをきっかけに深い縁をまた結ぶんだろうか。

 赤ジャージが着替えて戻ってくるのを待って、オレたちは暗黒水産の道場からおいとますることになった。
 「では失礼する」
 赤ジャージが深く一礼をした。オレたちもそれに倣う。
 敵陣も、一同礼を返してくれる──柔道部員はいいとして、コウヘイたちとオレたちが礼をしあうなんて、初めてだ。

 「佐藤先生!! 次はウチの赤ジャージ、絶対もっと強くなってますんで!!」
 突然リュウジが声を張った。
 「俺、応援してますんで。マキ姉と赤ジャージのこと」
 「君は……どこかで? そうか、妹の学生時代のアルバイト先の、か」
 「そうです。いつか赤ジャージが佐藤先生に勝てたら、俺はマキ姉も喜ぶと思ってます」
 「リュウジ──」
 名前を呼んだ赤ジャージに、リュウジは頷いて続けた。
 「だから、俺ら責任持って鍛えますんで。夜露死苦ぅ!!」
 ついこないだ事の起こりを知らされて、あんなに衝撃を受けていたのに──リュウジはなんと健気なんだろう。俺は感心していた。

 そんなリュウジに、佐藤先生はこう言った。
 「よし、君には妹も世話になったはずゆえ、特別にひとついいことを教えよう」
 「有り難き幸せ!!!」
 「我が妹は、ああ見えて柔道の有段者である。あまり表にしていないので、知らなかったろうが」
 「ええっ、マキ姉が? 俺、全然……」
 あからさまに、リュウジはびっくりした顔をした。

 「現役は退いたとはいえ、指導程度はできるのではないかと私は思う」
 「というと──」
 「君の先生を鍛えるのには、多少の役に立つかもしれないということだ」
 リュウジと赤ジャージは、そろってぽかんとした顔をしていた。
 それを見て、佐藤先生は声高らかに笑ったんだ。
 さらにそんな佐藤先生に、今度は暗黒一家の面々がぽかんとした顔になってた。

 昔馴染みの真剣勝負は、こうして意外なラストで第一幕を下ろした。
 迎える第二幕の主人公は──果たして誰なんだろうな。
 
 
   * 純情・赤ジャージ 完 *
 
 

テーマ : パチスロ - ジャンル : ギャンブル

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コメント

ニクイね、佐藤先生!

とりあえずハッピーエンド・・・?なのかな?
うん、ヨカッタヨカッタ。
ダイゴの柔道はいいですね。雰囲気ありますヨ。最近マジマジとダイゴを見て
なかなかかっこいいことに気づきました♪
しかも昨日、今日と引いたボーナスはすべて
ダイゴが勝ってる!や、やるじゃんダイゴォ!

>コウヘイたちとオレたちが礼をしあうなんて、初めてだ
あはは♪ウケました(笑)

>迎える第二幕の主人公は
誰?誰ですかぁぁ~ッ?ハァハァ・・


柔道ダイゴ

>>ピノコさま
なんか柔道ダイゴ、ウケがよろしいようで。
まんま似合いますよね~。

>しかも昨日、今日と引いたボーナスはすべて
>ダイゴが勝ってる!や、やるじゃんダイゴォ!
それスゴイかも!!! わたしは引き分け多いかなあ……。
でも半日で2回、雷神降臨したことあります!!!
ちょうど鬼浜寺の話を書いてた最中でした。だはは。

さ~て、赤ジャージvs佐藤先生の次幕は……どんなんだろ。ねぇ。

そういえば・・・

今世界柔道やってるんですねぇ~
ちなみにコレ書きながら見てますw
あまりにもリンクしてどれが赤ジャージだ?なんてひとりニヤニヤしております(笑)

さて、次は誰にぶっこんでくのかなぁ~♪

PS:ダイゴで勝てるピノコさまがうらやましぃ~
さいきんはノブオに勝率で負けてますwww
うちのダイゴもマキ姉に鍛え直してもらおうかな?!w

世界柔道

>>Tohkoさま
おお~、世界柔道!!!
そうですねえ。やってますねえ。奇遇ですwww
やっぱホンモノは迫力が違いますね(=^▽^=)
……勉強不足でごめんなさいね。だはは。

>あまりにもリンクしてどれが赤ジャージだ?
いちばん気迫に溢れていたのが赤ジャージです!!!
なんちって。

そういや今日、両隣でダイゴ活躍してましたよ。
左隣:喧嘩でタカシ相手に雷神降臨
右隣:単車でコウヘイ仏恥義ってた
……やるときゃやるなあ (´∀`)







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