目次

過去の記事をまとめて表示できるようにしてみました。 【 】がついている項目をクリックすると、それぞれのタイトルの記事を一括でお読みいただけます。 【 】内の数字が若い順に古い記事となっております。 【 】内の冒頭数字が同じものはそれぞれ対になるおはなしです。

これまでのおはなし

全タイトルを表示

御来訪感謝

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

伴走・白ジャージ 2


 「赤ジャージ、昨日の今日で、こんなとこ佐藤先生に見られたら殺られるんじゃねえか? 昨日負けたじゃねえか。なあ、ハヤト」
 「ん? あ、ああ──」
 「あは、心配してくれるんだ、リュウちゃん」
 白いジャージを身につけたマキ姉さんが、リュウジに笑いかけた。ふっくらとした頬がほころぶ。
 「そんなんじゃねえけどよ、マキ姉」
 「あら、リュウちゃんったら素直じゃないなあ」
 「ちぇ……」
 リュウジのそんな顔を見て、赤ジャージが笑っていた。笑いながら答える。

 「リュウジ、心配無用だ。実は、昨日あのあと佐藤から電話があってな。勝負の結果を曲げるのは良しとしないが、訓練の名目だったらマキさんと会ってもよいというお墨付きをいただいたのだ」
 ひとことずつ言葉を選ぶように赤ジャージは言い、隣で頭ふたつ分背丈の低いマキ姉さんがちいさく頷いている。

 「へええっ、そうだったんだ、先生」
 水面下でかなり意外な方向へと展開してたんだ、この話。オレはだいぶ驚いた。
 すると、リュウジのほうは驚くというよりも、むしろ──
 「なんだよ、心配して損したじゃねえか。にしても赤ジャージ、そんな大事なことどうして俺に真っ先に報告しねえんだ? 水臭いじゃねえかよ!!!」
 ちょっと拗ねているようだな。

 「わ、悪かった、リュウジ」
 赤ジャージは、きっと照れくさかったんだろうな。いまもそんな顔をしてるから。頭をぽりぽり掻いているくらいだし。

 「ね、リュウちゃん。ありがとね」
 「ん?」
 そんな赤ジャージの横にいたマキ姉さんが言う。
 「リュウちゃんのおかげみたい。兄さんがここまで折れてくれたのは」
 「────?」
 「昨日、リュウちゃんが帰り際に言ったことに、兄さん、感心したんですって。先生のことをリュウちゃんが責任もって鍛えるって言ったのが」
 「え……」
 「先生がね、そんなふうに生徒に言ってもらえる幸せな教師になっていたのなら、すこしは信用してもいいかもしれないって。それでここまで許してもらえることになったの」
 
 「へえ、そうだったんですか……」
 オレは感心してしまった。
 そんなふうに大人はリュウジを見るんだな。
 リュウジは拗ねたらまるで子供みたいだけど、その割に喧嘩なんかもさんざんやるけど、それでも誰もがある意味信頼してしまう──それはオレたち同世代だけに限ったことではないらしい。
 初対面に近い佐藤先生にも、リュウジの気合いとか本気とか正義感とか、そういうのって伝わったんだ。
 リュウジ、やっぱり凄い漢だ。
 そして、オレにはなんとなく感じられた。
 佐藤先生には、極悪非道の暗黒一家すら平身低頭してしまうその理由が──。

 「そうだな。本当にリュウジのお陰だ。リュウジ、何から何まで済まん」
 「いや、礼を言われるほどじゃねえぜ。だって俺、嘘なんか言ってねえから」
 ちいさくため息と苦笑を見せたあと、リュウジは思い直したようにそう言った。
 「ま、よかったじゃねえか、赤ジャージ」
 リュウジは赤ジャージの肩をぽんと叩く。なんか、1学期より仲よくなったみたいだ。

 「ハヤトもな。いろいろ迷惑かけた」
 「いえいえ。とんでもない」
 「ほんとうにありがと。ふたりとも」
 純情一路の赤ジャージの「これから」を紡ぐきっかけを作る手伝いができて、オレはかなり気分よくなっていた。
 きっとリュウジも同じ気分になれた……かな?

 「おっと、だいぶ遅くなったようだ。リュウジ、ハヤト。悪いが俺はそろそろ」
 「オウ!! 気を付けてな」
 「まだ練習するの? 先生」
 「ああ。あとちょっとだけ時間があるので、一度道場に戻ろうと思う。マキさん、まだ大丈夫ですよね?」
 「はい、先生。門限の8時まであと2時間あります」
 「では、もう少しお付き合いください」
 「ええ、喜んで」
 そんな会話聞くの、くすぐったい感じだった。

 それじゃあ、と手を振って、ふたたびランニングのふたりの後ろ姿を見送った。
 しばらく見ていたリュウジが、思いついたように急に大きな声で叫んだ。
 「おおい、赤ジャージ、マキ姉!! 帰りにウチの店に来てくれや!! 俺、何か作って待っててやるから!!! 食い終わって門限ヤバかったら、マキ姉は俺が責任もって送ってくぜ!!」
 「お~!! ありがとうな、リュウジ」
 「リュウちゃん、あとで行くね!」
 振り返って、ふたりは応える。
 そして夕焼けに照らされたふたりの背中を、リュウジもオレもしばらく見てた。

 走りに行く予定を返上して、店に戻ったリュウジがふたりのために用意したのはチャーシューをたくさんのせる予定のラーメンのほかに、赤ジャージのために餃子と、マキ姉さんのためにシュウマイだった。

 ご丁寧に、餃子もシュウマイもわざわざタネから作っていた。
 「よし、こっちにはニンニクたっぷり入れて、と」
 「ふうん。サービスいいね。赤ジャージも疲れてるだろうからね」
 「と思うだろう? ハヤト、まだ甘いな。これ食ったら赤ジャージ、マキ姉の唇に妙なことできなくなると思わねえ? そんなこと俺が許さねえってことだ」
 「あはは、なるほど」
 リュウジは自分の思いつきに至極ご満悦の様子だったのが笑えた。
 
 「で? シュウマイはやっぱり?」
 「オウ。干しシイタケ抜きの特製だぜ!!!」
 「うんうん。マキ姉さん、きっと喜ぶね」
 「だろう? 俺、ほんとにマキ姉思いだよな」

 時計は7時半。そろそろ訓練を切り上げたふたりがやってくる頃かな。
 リュウジもちらりと時計に目をやると、蒸し器と鉄板とを用意しはじめていた。

 こないだ作ってもらったときは少々スープがしょっぱかったけど、きっと今日のリュウジのラーメンは、やたらとおいしい予感がする。
 どういうわけか、そんな予感がオレにはしているんだ。
 多分──空腹のせいだけじゃなくてね。
 

   * 伴走・白ジャージ 完 *


テーマ : パチスロ - ジャンル : ギャンブル

<< 秘密指令・総員ニテ捕獲セヨ 1 | ホーム | 伴走・白ジャージ 1 >>


コメント

青春だ~

こんばんわ 華丸様。
リュウジ青春してますね~
さりげなくフォローと追い討ち(?)をかけてるハヤトが良い味出してます!
この連載読み出してから学校演出とボーナス中の赤ジャージを見ると思わず笑ってしまいます。
今日の赤ジャージは隙だらけでした(笑)

赤ジャージって……

>>単savaさま
リュウジ、けっこう普通の高校生みたいですよね~(^^:)
がんばれよ!! って声かけてやってください。だはは。

>今日の赤ジャージは隙だらけでした(笑)
お~~~、うらやましい!!! いっぱいカッ飛べましたね♪

つーか、赤ジャージって、いったい何て名前なんでしょうかねえ。

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

 BLOG TOP 


  1. 無料アクセス解析
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。