目次

過去の記事をまとめて表示できるようにしてみました。 【 】がついている項目をクリックすると、それぞれのタイトルの記事を一括でお読みいただけます。 【 】内の数字が若い順に古い記事となっております。 【 】内の冒頭数字が同じものはそれぞれ対になるおはなしです。

これまでのおはなし

全タイトルを表示

御来訪感謝

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

秘密指令・総員ニテ捕獲セヨ 8

 
 いつもは敵対するオレたち鬼浜爆走愚連隊と暗黒一家の両軍が初めて手を携えて敢行している作戦は、結局何の進展もないまま明け方が近づいてきている。

 深夜を過ぎて、さすがに疲れたところで両軍は交互に仮眠をとった。
 その間、ゴンタが何か夢でも見たらしくてうなされていた。
 
 ウチのノブオと暗黒タカシの若手2人は疲れていないと言い張って、結局この時間までろくに休みもしないで辺りを探し回っていた。
 「ご苦労さん、ノブオ」
 「オレ、若いっスからね。ハヤトさん」
 声をかけるとノブオは結構元気そうだ。対抗するようにタカシも応える。
 「オレだって平気ですよ」
 「無理するなよ、タカシ。顔色よくない」
 「へへ、気のせいですよ、ハンゾウさん」
 やれやれ。次の代もお互い張り合ってるな。

 そうして空はだんだん明るくなってきて──夕映え木立の木々がぼんやりと輪郭を露わにしはじめてくる時間になっていた。
 
 「結局、見つからねえか。ゴンタ、もう諦めるか?」
 「…………」
 コウヘイに問われて、ゴンタはうつむいて何も答えない。
 「おい、コウヘイ!!! 諦めてどうすんだ!!! まだ時間は残ってるだろ? 最後までしっかり気合い入れろや!!!」
 リュウジはまだまだ諦める漢ではなかった。
 それへ同意するかのように、ハンゾウも言う。
 「総帥。朝はモモコが休息する時間。まだチャンスありと見た」
 さすがに粘り強い闘い方をするだけあるな、ハンゾウは。
 「そうか。済まなかった、皆。では最後にもう少しだけ力を貸してくれ」
 「当たり前!!! ほれ、ハヤト、ダイゴもノブオも!!! もうちょっと探そうぜ」
 「押忍!!!」

 捜索は最終局面だ。朝になったらオレたちは学校へ行かないといけない──オレは別にサボってもいいんだけど、リュウジは絶対そんなことしないから。
 残された時間を使って、オレたちは明るく、見通しよくなった夕映え木立に散っていった。
 
 オレが探してるあたりにゴンタが近づいてくる。いつも喧嘩のときに見せるのとはひと味違った強いまなざしを、ゴンタはしていた。
 「なあ、ゴンタ」
 オレはふと声をかける。するとゴンタは立ち止まる。
 「ゴンタが最初にモモコを見つけたのってどの辺りなんだ?」
 「あっち……」
 ゴンタが指さしたのは、オレらが前夜、食事をとった広場から近いあたりだ。1本の大きな木の裏側の茂みがその地点のようだった。

 「そこかあ。その草むらはオレも昨夜探した記憶あるなあ」
 ゴンタも頷く。きっと真っ先に探したんだろうな。
 「まあいいか。どうせ同じとこ何人かで見たりしてたんだろうからな。ゴンタ、もう一遍見てみようぜ」
 「おお」
 近づいていって、ゴンタは太い指で雑草を掻き分けた。その手元をオレは見ている。
 丁寧に丹念に、ゴンタの手元は草の中を行き来する。
 が──やはり収穫はなかった。

 無言でゴンタは立ち上がって、覇気なくうつむいた。
 可愛がっていたモモコに脱走されて、ゴンタはさぞ落ち込んでいるんだろう。
 口数は少ないながらも、その必死の背中がせつなく丸められているのを見ると、なんだかオレも胸が痛い。
 元気出して、なんて声をかけようかと思って、ゴンタの広い背中に手を置こうとした。

 と──ゴンタの背中のど真ん中に、まるで飾りのようにきらきら光る、ちいさな流線形が張り付いている。

 「あ、れ──って、ゴンタ!!! うわ、背中!!」
 「……?」
 「これ、くっついてるのモモコじゃないの? リュウジ、コウヘイ、みんな~~~!!!」
 オレは慌ててみんなを呼ぶ。
 一番近くにいたハンゾウが真っ先に駆けつけて、ゴンタの背中を飾る流線形──モモコを大事そうに掌に収めた。
 その不思議な姿──オレが昨日の夕方に一瞬だけ見た、陸の上に住む奇妙な生態を持ったサンマに似た姿の魚は、もう逃げたりしようとする素振りは見せなかった。

 「ゴンタ! よかったじゃないか。やっぱりモモコはお前が好きなんだ」
 「モモコ……」
 ハンゾウからモモコを受け取ったゴンタは、真実うれしそうに瞳に涙を浮かべていた。
 「よかったな、ゴンタ」
 オレはようやく、ゴンタの広い背中をぽん、と叩くことができたんだ。
 
 そして、ついでにソレを見つけてしまった。
 「あれ? なんか裾のとこにもう一匹……?」
 「なに? おおっ、コウヘイ!!! モモコ、仲間連れてるぜ!!!」
 「何……だと?」
 驚きのあまり絶句しているコウヘイに、オレはゴンタの背中からとったもう1匹の陸棲の魚を差し出した。
 最初に見たモモコよりも幾分大きいそれは、コウヘイの手の中で、コウヘイの顔を見上げていた。

 「とにかく今日は世話をかけたな」
 コウヘイがそう言って──驚いたことにオレたちに頭を下げたのは、もう明け方というよりは朝と呼ぶのがふさわしい明るさになったころだった。
 用意していたらしい、プラスティックの飼育かごに2匹の陸棲の魚を入れたのをゴンタが大事そうに抱えている。
 「礼には及ばねえぜ、コウヘイ。な?」
 リュウジがオレたちを振り返る。オレもダイゴもノブオも、もちろん大きく頷いた。
 
 「それにしても、俺は感激だぜ!!! こんな不思議って、本当にあるんだなあ。いいもん見させてくれてありがとうよ」
 リュウジは飼育かごをのぞき込んで笑っていた。
 「今度は逃がすなよ、ゴンタ。2匹も探すの大変だろうからな」
 オレが言うと、ゴンタは2度、3度と大きく首を縦に振る。
 「こっちのにも名前つけないといけないっスね」
 「2匹は、つがいなのだろうか。繁殖できるとよいな」
 ノブオもダイゴもこんなふうに言っていた。

 「ところで……その、今日のことだが」
 そんなオレたちを見ながら、コウヘイは珍しく言い淀む。
 「コウヘイ!! 大丈夫だ。オレらは決して他言しねえから安心してくれ。だって最初にそう約束しただろ?」
 「ああ。信じよう。恩に着る」

 握手──まではしなかったけど、今日のこの一件についてだけはオレたち鬼浜爆愚連隊と、コウヘイたち暗黒一家の間に奇妙な共感があった。
 宿敵同士でもこんなことあるんだね。
 もしかしたら、陸棲の魚が存在することよりも不思議なことかも──なんて思いついたらちょっと笑えた。
 隣にいたハンゾウに、妙な表情でのぞき込まれた。不覚。

 「たまには散歩させてやれよ!!」
 「ああ。そうだな」
 「それでもって、誰にも見つかるなよ!!」
 「もちろん気をつける」
 「繁殖したら報せてくれるか?」
 「……考えておく」
 両軍のリーダー同士がこんな会話をしたのを潮に、オレたちは袂を分かったんだ。

 すっかり朝になった帰り道。
 疲れてはいたけど、オレたちはとても満足感につつまれていた。
 「いや~、見つかってよかったっスね~」
 「そうだな。ノブオ。俺もあのようなものを見られて、とても幸せだ」
 ノブオもダイゴも、すがすがしい表情を朝日に輝かせてる。

 「そういやリュウジ、写真は?」
 「あ? ああ。いや、いいんだ。ハヤト」
 「へえ。兄貴、記念撮影したかったんじゃないっスか?」
 「まあな。でもよ、アレってあいつらの大事な秘密だろ? やっぱり超えたらまずい一線みたいのがあるんじゃねえか、ってな」
 「ふうん。なるほどね」
 「まあな、また探しに行ったら見つかるかもしれねえしさ。そしたら俺も飼ってみたいぜ」
 さすがリュウジはリーダーたる者。互いのプライドみたいのを優先することを知ってるんだなあ。

 「リュウジ。写真は撮らなくて正解かもしれん」
 と、急にダイゴが声を低めてこう言った。
 「何? ダイゴ」
 「押忍。あのあたりで写真を撮ると──正直言って何が写るかわからぬゆえ」
 「え──」
 「それって、ダイゴさん──」
 ダイゴは曖昧に笑みを返しただけだった。
 あ~あ、かわいそうに。リュウジ、すくみ上がってるよ。

 そろそろ時間は7時ってとこ。
 一旦家に帰ってシャワー浴びるくらいの時間はありそうだ。
 どうせいつもの時間にリュウジが迎えに来るだろうから、サボるわけにはいかないけれど──今日はたぶんずっと居眠りだろうな。
 なんとなく、水族館にいる夢とか見そうな予感がするなあ……。大きい水槽の中にモモコの仲間がたくさんいて、泳いだり、ときどき陸に上がったりしてたのしそうにしてる夢。

 「って、おい、ハヤト!! 危ねえな。歩きながら寝るんじゃねえぜ!!!」
 「ん……?」
 いけね、フライングしちゃったな。オレ。
 夢の続きは授業中にでも楽しむことにしようかな。


   * 秘密指令・総員ニテ捕獲セヨ 完 *


テーマ : パチスロ - ジャンル : ギャンブル

<< 尾ひれのついた怪魚 1 | ホーム | 秘密指令・総員ニテ捕獲セヨ 7 >>


コメント

こんばんわ~

一気に全話読んじゃいました。
いやいや楽しかったです!
暗黒の面々が可愛く思えました。
ハヤトとハンゾウのやり取りとか面白かったです!
今日まで読んできて感じることは各キャラクタがしっかり色付けされていて、生き生きしていて鬼浜の世界に引き込まれるようです。
本当にハヤトの日々徒然日記を読んでる気がしてきます。
これからも楽しみにしています!

仲良きことは美しきかな

鬼浜と暗黒が一致団結した姿はほほえましかったデス。
でもスロの中の彼らはボッコボコに
やり合ってるんだよなぁ~(^_^;) あのギャップが・・・(笑)

華丸ワールドのおかげで、私の中のハンゾウの
ランクがかなり上がりましたよぉ。よく見るとなかなかの
イケメンですよね??また鬼浜打つ楽しみが増えたッ!
・・・・って、最近ちっとも打ってないや・・・


>>単savaさま

いっき読み!!! うわ~、おそれいります。
おつかれさまでした(^^:)
楽しんでいただけたようで、嬉しいです♪

暗黒のヤツらも、わりと人間っぽくなれたかなあ、と。
勝手に思ってます。

ハヤトとハンゾウは、実機でも実力的に五分五分
だったりしますよね~。
だから、ほんとにいいライバルなんじゃないかな。


>>ピノコさま

ほほえましかったですか。
それは幸いでございます(=^▽^=)
若者なりの敵対心とか、探求心とか、そんな感じ
です。

ああ見えて、ヤツらまだ10代ですからね~。
ジャニーズの若手と同世代!!! おそろしい……。

ハンゾウって、何考えてるんだかいちばん不明な
キャラですよね。実機で。
イイ感じに思っていただけたら彼も喜ぶことでしょう。
だはは。

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

 BLOG TOP 


  1. 無料アクセス解析
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。