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叢中に咲く一点の紅い花 2

 
 土曜日の夜、まだそんなに深い時間になる前、しかも海沿いの国道が空いたころ。
 その時分を狙って、オレたちは千晶ちゃんと河川敷で待ちあわせしてた。
 リュウジが一度一緒に走ろうと誘ったのを、土曜日だったらとOKしてくれたんだ。

 けど、待ちあわせの時間をすぎても千晶ちゃんの姿は見えない。 
 「ダイゴ。今何時だ?」
 「9時……そろそろ20分か」
 「ハヤト。ちょっと見て来ねえ? 千晶ちゃん遅いよなあ」
 「そうだね。その辺見てくるか。ノブオ、一緒に行く?」
 「あ、は~い。ハヤトさん」
 オレはノブオを伴って、単車で道路へ出た。

 「どうしちゃったんっスかね、千晶センパイ」
 「さあ。時間間違えたかな?」
 「それだったらいいんスけど。ほら、千晶センパイって美人だからオレ、心配で」
 「いや、顔はわかんないよ。メットくらいかぶってくるだろ? カラダは違っても中身は女性だもん」
 ああ、そうか──とノブオが頷いたところで、オレたちは速度を上げて国道へ入ろうとしていた。
 
 と──ちょうど国道へ出る信号待ちをしていたところで、黒い車体がオレたちの前に現れる。
 アメリカンタイプの単車。そのライダーはいかついマシンに似つかわしくない華奢なカラダをしていた。
 オレとノブオを認めると、ライダーは単車をとめて手を振りながら近づいてくる。
 「ごめ~ん、ハヤト。遅くなっちゃった」
 「あれ、千晶ちゃんか?」
 近づいてみると、それは千晶ちゃんだった。皮のパンツと白いシャツ姿で、予想外にもメットはかぶらずに、ストレートヘアを風になびかせていた。

 「うわ~、千晶センパイ、かっこいいっスね~」
 「あら、そう? それはありがと」
 ノブオの賞賛に首をちょこっと傾げて千晶ちゃんは微笑んだ。
 「なはは。オレ、照れちゃうっス~」
 「おいおい、ノブオ……」
 やれやれ。ノブオの奴ってば免疫ないのバレバレだよ。
 
 「まあいいや。千晶ちゃん、とりあえずこっちだ。リュウジとダイゴが待ってる」
 「うん。かの有名な河川敷の集会所ってとこでしょ?」
 「有名──なんだ。あそこ」
 「そりゃあね~。女の子の間じゃ、夜に行ってみたくない場所ランキングの不動のナンバーワンだよ」
 「なるほど。わかる気がするなあ。女の子連中も巧いこと言うね」
 「でしょ~? あはは」
 千晶ちゃんの笑う声が、だいぶ涼しくなった風にのる。

 「へええ。そうなんっスか。オレ、ちっとも知りませんでしたよ」
 「あは。ノブオくんだっけ? ダメだよ、そういうのに無頓着だと、リュウジみたいな無粋な男になっちゃうよ」
 「あ、は~い、千晶センパイ!! オレ勉強しま~っす!!」
 「へえ、ノブオ。素直じゃん」
 「当ったり前じゃないっスか、ハヤトさん」
 「ふうん。じゃあ後でリュウジに言っとく。ノブオがリュウジみたくもてない男にならないように勉強する予定だって」
 「えええ~、そそそ、それはないっスよ……ハヤトさん」
 そんなオレたちのやりとりを見てた千晶ちゃんは、こんなふうに言った。
 「いいよね、男同士の他愛ない感じって。あたしそういうのって憧れるかも」
 カラダは男子、ココロは女子の千晶ちゃんが、珍しく複雑な表情をしてた。

 そんな前置きのあと、千晶ちゃんはようやくリュウジと合流したんだ。
 「おう!! 千晶ちゃん」
 「こんばんは、リュウジ、ダイゴ」
 「押忍」
 「どうしたよ? 遅かったじゃねえか? どうかしたんじゃねえかと心配したぜ」
 リュウジが言ったのに、千晶ちゃんはこう返す。

 「うん。そもそもちょっと出遅れたのがマズかったんだけどね。途中でちょっとね」
 「何かあったのか?」
 「えへへ。ちょっとね。道幅いっぱいに低速で走ってる、ガラの悪い兄ちゃんたちがいてさ。速度上げられなくて鬱陶しかったから、ムリヤリ突っ込んでったら囲まれちゃって」
 「え──何だって?」
 こともなげに千晶ちゃんは言い放った。それへオレたちは言葉を失う。

 「集団に突っ込んでって、振り切ろうとしただけ。うまく交わせばすり抜けられそうだったから。でも、四方からプレッシャーかけられたよ。まあ、何とかなったけどね」
 「おい、危ない橋を渡るなあ、千晶ちゃん」
 「そう? だってリュウジなんかもそういうの、普通にやるんでしょ?」
 「そりゃ、まあ、やらねえことはねえけどよ。けど俺らと千晶ちゃんじゃ──なあ、ダイゴ?」
 「ああ。それが元で諍いになったりもするゆえ、ひとりだと危険だな。それに千晶さんは殴り合いなどせぬだろう? まあ、千晶さんのような見た目のひとに相手も仕掛けては来ないとは思うが」
 「ああ、そか。そういうこともあるんだ。気をつけようっと」
 なんて言いながら、千晶ちゃんは肩をすくめてちょこっと笑った。
 
 「なんか……千晶センパイって思ったより逞しいですね」
 「あ、ノブオもそう思う? 千晶ちゃん、褒め言葉、褒め言葉!」
 「あはは。どうもありがと」

 「まあな、なにより無事に合流できてよかったぜ。さて、そろそろ行くか?」
 リュウジの号令で、ようやくオレたちは浅い夜の国道へと繰り出した。
 海からの風がオレたちをつつむ──それはもう完全に秋風になってた。


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