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叢中に咲く一点の紅い花 3


 「リュウジ、ハヤト! おはよっ!!」
 週明け。いつものようにリュウジと連れだって登校する途中、千晶ちゃんがオレたちを見つけて後ろから駆け寄ってきた。
 「オウ、千晶ちゃん」
 「おはよう。肌荒れ、大丈夫?」
 「あんま大丈夫じゃないなあ。やっぱ夜は出歩くもんじゃないね。楽しかったけど」
 千晶ちゃんは苦笑いしてる。カラダは男子、ココロは女の子の鬼工アイドル・千晶ちゃんは、もちろんお肌の手入れも怠らない。そんな千晶ちゃんに夜更かしを強いてしまったのは、何を隠そうオレたちだったんだ。

 「え、どこが荒れてるんだ? すべすべじゃねえか?」
 「うわ、だからリュウジ、そんな気安く触るなよ、女の子のほっぺに」
 「あ、そうか。わはははは。千晶ちゃん逞しいからついうっかりするぜ」
 「──いいよ。もう慣れたよ」

 こないだの土曜日。
 リュウジの誘いに乗った千晶ちゃんが、オレたちの夜走りに同行したんだ。
 待ちあわせ場所に来る前にひとしきり熱い走りをしてきたらしい千晶ちゃんは、オレたちと一緒になって走ったときもずいぶんカッ飛んでいた。
 いつもみたいに国道を縦横無尽に走れるような深夜じゃなかったから、オレたちは遠慮がちに走ってたつもりだったんだけど、千晶ちゃんはやけにテンション高い走りを見せた。

 「ね、誰か競争しようよ」
 オレたちがときどき暗黒一家の連中と勝負に使う海辺の倉庫のあたりまで来ると、知ってか知らずか千晶ちゃんはそんなことを言い出した。
 「わはは、競争か。いいけど、俺ら本気出したらすげえぞ?」
 「なによ、あたしだってけっこうやれるつもりだよ?」
 「そうか? ならいいけどな。誰と勝負したい?」
 「誰でもいいよ」
 くすり、と笑いながら千晶ちゃんはそう答えた。オレたちは集まって、誰が相手になるかを相談する。

 「どうする? ハヤト行くか?」
 「いいけど。でもオレ、手加減できないかも」
 「不器用ですもんねえ、ハヤトさん」
 「やかましいよ、ノブオ。じゃあお前行けよ」
 「オレっスか~。どうなんだろ。ダイゴさんは?」
 「べつにかまわんが」
 要するに、力関係が誰とだったら釣り合うのかがわからないんだ。オレたちはあれこれ悩んでいる。と──
 
 「ちょっと~。誰でもいいから早くしようよ」
 大きな声で呼ばわりながら、千晶ちゃんはアクセルをふかしてる。
 「あ~、もうわかった。俺がやってやる!!!」
 焦れた千晶ちゃんを見かねて、結局リュウジが名乗りを上げたんだ。

 「よし、リュウジ。手加減なしね」
 「オウ!! いいんだな?」
 「当然!!!」
 スタート地点でふたりはそう言い合っている。さて、リュウジは本当に手加減しないのか。自信満々の千晶ちゃんはどれだけ速いのか。どっちが勝つのか──

 「それじゃ行きますよ。用意はいいですか? ではでは、Ready──GO!!!」
 ノブオの号令で赤と黒の2台はスタートを切った。
 ルートはスタート地点から300mの直線を国道まで一旦出て、次の信号から倉庫群の裏手を一周して戻ってくる、といったショートコース。
 リュウジと千晶ちゃんの2台はスタート初っぱなからずいぶん飛ばしているように見える。あっという間に国道へ姿を消した。
 
 「ほう。なかなか速いな。千晶さん」
 「な。オレもそう思う。しかもリュウジにつっかけてったような……」
 「どっちが先に来ますかねえ?」
 「まあ、普通に考えたらリュウジだろうけどね。手加減するなって言われて速度落とす漢じゃないし」
 「押忍。そこがハヤトとは違うな。リュウジは」
 「えへへ。そうかもしれないっすね~、ダイゴさん。だってハヤトさんは女の子には誰にだって優しいですからねえ」
 「……お前、泣かすよ? ノブオ」
 まったく。なんでかオレっていつもいじられるんだよな。ノブオに。
 いや、ノブオだけじゃないんだけどさ……。

 結局、その勝負は思ったとおり手抜きなしのリュウジが圧倒的に速かった。
 ゴールした時点で車体2つ分は距離があったろうか。でも、充分善戦だったと思う。
 「あ~、負けちゃったあ」
 千晶ちゃんは戻ってくるなりそう言った。
 「まあな。手加減なしって約束だしな」
 そんなふうにリュウジは答えたけど、もしかしたら多少は手加減したのかもしれない。
 そうじゃなかったら、よっぽど千晶ちゃんもいい勝負センスをしているのか。
 
 「でも悔しいな。勝負は勝たないとうれしくないよ、やっぱり」
 「ははは、負けず嫌いなんだ。千晶ちゃん」
 「そうよ。逞しいでしょ? ハヤト」
 ホントに、とノブオが合いの手を入れていた。

 結局、土曜日はその勝負のあとにもうひとっ走りして──千晶ちゃんと別れたのは日付が変わる頃だった。
 「こんな時間になっちゃった。夜更かしは美容の大敵なのになあ。楽しいと時間ってつい忘れるね」
 「楽しかったか? それならよかったぜ」
 「うん。ありがとね、リュウジ。また誘ってね」
 そう言って、千晶ちゃんは帰っていったのだった。

 そして、今朝。
 千晶ちゃんは勝負熱を上げていたらしい。
 朝の挨拶が終わるなり、オレにこう訊ねる。
 「ねえ、ハヤト。あたしカーブの減速がいまいち巧くないみたい。そこ攻略したら次はリュウジに負けないと思うんだけどな。なんかコツある?」
 「ん? 減速か。うん、確かに課題だよね、それは」
 オレのとなりでリュウジはかなり残念そうな顔をしてた。
 いわく──女にしとくのはもったいない、って。なんか微妙だ……。


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