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叢中に咲く一点の紅い花 7


 「ノブオはとにかく、リュウジに認めてほしいのだろう。あんなに慕っているのだから」
 ハンゾウとの一騎打ちを望んだノブオを、ダイゴはそう評した。
 鬼浜町一周ルートの単車勝負に出たふたりの姿は、未だオレたちの視界には戻ってこない。
 「そうだね。ノブオはいつでも兄貴、兄貴ってそればっかりだから」
 リュウジとその横で手を揉みしぼる千晶ちゃんに聞こえないように、オレとダイゴはちいさく話していた。

 「ああ──もしかして、リュウジと最近仲いい千晶ちゃんにやきもち? ってのもおかしな話か」
 オレはちらりと、リュウジたちに視線をやってみる。
 「かどうかはわからんが」
 ダイゴは曖昧に言って、肩をすくめて見せる。
 「まあ、どっちみち積極的になるのは悪いことじゃないからね。きっかけは何だって、結果が次に繋がればそれでいいかな、って思うな。オレは」
 同感だ、というようにダイゴも頷いた。

 オレたちは、勝負の行方をじりじりしながら待っている。
 やがて遠くのほうからチューンしてあるマフラーの出す排気音が聞こえてくると思うと、勝負者たちのマシンの姿が夜の国道に浮かんでくる。
 一歩先を行くのは──予想どおりというか、ハンゾウの黒いマシンのように見える。
 ノブオの目立つピンク色のマシンは、ハンゾウに引き離されるまいと必死で追走してきているようだ。
 
 2台は最後の直線に入る曲がり角を入ってくるところ。コーナーへの入り方は、やはりハンゾウに軍配が上がる。
 「頑張れ、ノブオ──そこで粘れ!!」
 思わず口をついて出てしまう言葉。
 迷わないで、怖れないで行け、ノブオ!! 

 直線に入った2台のマシンは、速度を上げてゴールを目指す。
 そして、見守る者の息を呑む瞬間が訪れる。
 ノブオのマシンがラインを踏んだのは──ハンゾウのマシンが車体1台分先に走り抜けたあとのことだった。
 
 「兄貴……オレ」
 ハンゾウに勝利を譲ったノブオは、心から済まなそうな表情でオレたちの前に戻ってきたんだ。
 「ああ。ノブオはよく頑張ったぜ。今日は敵の調子がよかっただけじゃねえか」
 リュウジがノブオの肩に手を置いて声をかける。
 「けど、前にちゃんと考えて闘えって兄貴に諭されたのに……」
 ノブオは心から反省している様子だった。
 「いや、ノブオ。今日のお前は気迫が明らかにいつもとは違ったの、俺にはわかったぜ。だから行かせたんだ。そうだろ? お前、今日はやれると判断したんだろ?」
 「ええ──けど」
 
 「結果は結果だ、ノブオ。強い奴とも対戦せんと、成長しないのも確かなこと」
 「ダイゴさん……」
 ダイゴを見上げてノブオは呟く。
 「ハヤトさん──オレ、出しゃばってごめんなさい」
 「ノブオ……そんな顔するなよ」
 いまにも泣きそうな表情で、ノブオはオレに頭を下げた。
 ダイゴはノブオの横で慰めるように背中を軽く叩いてやっている。
 
 向こうでは、ハンゾウが仲間たちに囲まれている。
 景気のいい、けれどもやはり物騒な笑い声が聞こえてきた。
 勝負のあとの両軍の対比をこれでもかと見せつけたあと、コウヘイたちが近づいてきて言う。

 「気は済んだか、貴様等?」
 「────」
 リュウジは鋭い眼光でコウヘイを睨め付けている。
 「所詮遊びの貴様等とは訳が違うことがわかっただろう? 非礼を詫びればこちらも今日のところは退いてやる」
 そしてコウヘイの視線は、リュウジの横の千晶ちゃんに辿り着いた。
 
 その視線からかばうように、千晶ちゃんの前に立ち位置をずらしながらリュウジが大声を出した。
 「コウヘイ!!! 俺らが遊びなんかじゃねえことを証明するぜ!!! 詫びを言うのはその後だ。俺が相手だ、俺が負けたらちゃんと詫びる──だが、俺が勝ったら今度は、てめえこそ詫び入れろや!!!」
 「ほう──俺が詫びる? 何に対してだ?」
 「俺らを遊びだなんだと馬鹿にしたことへだ!!! そんなこと俺の信条が許さねえ」
 握りしめたリュウジの拳がちいさく震えている。
 よほど気持ちが高ぶっていることの証だ。

 「よかろう、リュウジ」
 歪んだ笑いを口許に浮かべながら、コウヘイはリュウジに応えた。
 「その代わり、俺が勝利したら──どうなるか解ってるんだろうな?」
 「オウ!!!」
 リュウジはひときわ大きな声で吠えた。
 覚悟のほどを見せつける、それはリュウジの漢気だった。

 かくして両軍は、ふたたび別々に陣を構えることになる。
 我が陣営の中心には、漢気をほとばしらせたリュウジがいる。
 「リュウジ──行くんだな」
 「オウ、当然だ、ハヤト!!! 俺、あんなこと言われて絶対許さねえぜ」
 「リュウジ、そういう時こそ判断は冷静にな」
 「オウ、解った。ダイゴの助言はいつも的を射てるぜ」
 「兄貴……ほんとにすみません。オレが不甲斐ないばっかりに」
 「ノブオ、気にすんな。俺が必ず仇はとってやるぜ」
 リュウジを囲んで、オレたちはひとことずつを託している。

 そして──それまで黙っていた千晶ちゃんが口を開く。
 リュウジではなく、敵陣のコウヘイに向かって。
 
 

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